この記事では、樋口一葉が書いた小説22作品のあらすじを一気に紹介しています(未完成作品1つを含む)。樋口一葉は短命でありながら、多数の作品を世に出し、その中から名著と呼ばれる作品もしばしば生まれています。
それぞれの作品については個別に詳細な記事を作成していますので、そちらを参照してください。
Contents
- 樋口一葉の小説作品(23作品)をあらすじとともに一気に紹介
- 闇桜(やみざくら)/1892年/樋口一葉
- たま襷(たまだすき)/1892年/樋口一葉
- 別れ霜(わかれじも)/1892年/樋口一葉
- 五月雨(さみだれ)/1892年/樋口一葉)
- 経つくえ(きょうつくえ)/1892年/樋口一葉
- うもれ木(うもれぎ)/1892年/樋口一葉
- 暁月夜(あかつきづくよ)/1893年/樋口一葉
- 雪の日(ゆきのひ)/1893年/樋口一葉
- 琴の音(ことのね)/1893年/樋口一葉
- 花ごもり(はなごもり)/1894年/樋口一葉
- やみ夜(やみよ)/1894年/樋口一葉
- 大つごもり(おおつごもり)/1894年/樋口一葉
- たけくらべ/1895年/樋口一葉
- 軒もる月(のきもるつき)/1895年/樋口一葉
- ゆく雲(ゆくくも)/1895年/樋口一葉
- うつせみ/1895/樋口一葉
- にごりえ/1895年/樋口一葉
- 十三夜/1895年/樋口一葉
- この子(このこ)/1896年/樋口一葉
- わかれ道(わかれ道)/1896年/樋口一葉
- 裏紫(うらむらさき)/1896年/樋口一葉
- われから/1896/樋口一葉
- 樋口一葉文学をより深く味わうには
樋口一葉の小説作品(23作品)をあらすじとともに一気に紹介
樋口一葉は、明治時代の女性小説家です。24歳没という非常に短命な人生ではありますが、世に多数の作品を残しました。
樋口一葉は父親と兄を亡くして以来、父の残した借金を返済することを強いられており、その生活は非常に厳しいものでした。また明治時代の女性は権利が小さく、男性優位の社会でした。そのような社会背景があったため、樋口一葉の小説は貧困や女性の立場の弱さを描いたもの、そして若い女性であるということから恋愛を中心とした作品が多くなっています。
樋口一葉の作品で著名なものは『たけくらべ』『十三夜』『にごりえ』『おおつごもり』などがありますが、それらは全て同一期間内に発表されており、そのことからその期間は「奇跡の14か月」と言われています。
それでは、樋口一葉の小説作品を年代順にあらすじとともに紹介していきます。
闇桜(やみざくら)/1892年/樋口一葉
樋口一葉が20歳の時に発表した処女小説作品が『闇桜』です。
後に恋人関係にあったとされる、小説記者の「半井桃水」に師事し作られた作品。20歳の女性らしく、恋愛感情を知ってしまった少女の心の苦しさを主人公「千代」を通して表現しています。
兄弟のように仲良くしていた千代と良之助ですが、千代の学友からこころない一言をかけられたことをきっかけに、千代は良之助を男性として意識するようになります。やがて恋の苦しさは千代を追い込んでいきます。
たま襷(たまだすき)/1892年/樋口一葉
『闇桜』と同じ樋口一葉が20歳の時に発表された作品が『たま襷』です。
『闇桜』同様、今回も女性が男性との関係に悩むという内容になっています。
が、『闇桜』より少し話は複雑になり幼いころから自分を育ててくれた、雪三と華族(金持ち)の竹村縁との間で心悩ませる主人公「糸子」が主人公です。
別れ霜(わかれじも)/1892年/樋口一葉
樋口一葉が20歳の時に連載を開始した作品が『別れ霜』です。
相思相愛の関係にあった、主人公「お高」と「松沢芳之助」ですが、お高の父親が松沢家を利用したことにより二人は離別せざるを得なくなります。
その後誤解が解け、和解した「お高」と「芳之助」ですが、親の許しを得ることは叶わず悲劇的な結末へと物語は進んでいきます。
五月雨(さみだれ)/1892年/樋口一葉)
樋口一葉が20歳の時に書かれた作品で、『たま襷』と同じく三角関係がテーマとなっています。『たま襷』は男性二人に女性が言い寄られることによりその苦悩から主人公の女性は自害を選択しました。
この『五月雨』では、男性の方が二人の女性から言い寄られることにより男性が苦悩してある決断をするまでの過程が描かれています。
経つくえ(きょうつくえ)/1892年/樋口一葉
樋口一葉が20歳の時に連載を開始した作品です。母を早くに亡くした「香月園」は、「松島忠雄」により世話を受けていますが、それを煩わしく感じます。
松島忠雄は仕事により北海道へ赴任するのですが、それにより園の心境が変化していきます。
大切なものは近くにあるほど気付かない、というテーマが描かれています。
うもれ木(うもれぎ)/1892年/樋口一葉
樋口一葉が20歳の時に発表した『うもれ木』は、今まで恋愛模様が中心であった樋口一葉の作品とは異なり、売れない絵師が主人公となっています。
貧困に苦しみながらも、芸術へ腐心していく兄と、それを支える妹。
二人に思わぬ救いの手が差し伸べられるかと思いきや、物語は悲劇的結末へと向かいます。
暁月夜(あかつきづくよ)/1893年/樋口一葉
『暁月夜』は樋口一葉が21歳の時に発表した作品です。
ヒロインに一目ぼれをした学生の森野敏と、人から愛されることを頑なに拒み続ける「香山一重」を中心に物語は進みます。
一重が恋愛を拒否し続けるのには、とある理由があるのですが、そうとは知らない森野は一重に手紙を出し続けます。一重が別荘へ移る前夜、とうとう森野は一重の元に乗り込みますが、そこで一重はなぜ自分が恋を拒絶し続けるのかを吐露します。
雪の日(ゆきのひ)/1893年/樋口一葉
『雪の日』は樋口一葉が21歳の時に発表した作品です。
雪の日に駆け落ちした、臼井珠とその先生である桂木一郎。臼井珠がその時の様子を振り返る形で話は進みます。
後の恋人関係であった半井桃水に「今日は泊まっていけば?」と言われた日にその構想ができたと言われるこの作品、果たして樋口一葉の分身である作中の臼井珠はどのような振り返りをしているのでしょうか?
琴の音(ことのね)/1893年/樋口一葉
樋口一葉が21歳の時に発表された作品が、『琴の音』です。
盗賊に成り下がった少年が、少女の琴の音により真人間に更生していくという話が描かれています。
花ごもり(はなごもり)/1894年/樋口一葉
樋口一葉が22歳の時に発表した作品が『花ごもり』です。
相思相愛の仲であった二人が、「家」のために別離を余儀なくされ、ヒロインが田舎に美しくこもるまでの様子が描かれています。
やみ夜(やみよ)/1894年/樋口一葉
樋口一葉が22歳の時に発表された作品です。
恋人に裏切られて捨てられた「松川蘭」の闇を中心として、元恋人の波崎、そして松川欄に魅せられた高木直次郎、それぞれの闇と社会の闇がこの小説により炙り出されます。
大つごもり(おおつごもり)/1894年/樋口一葉
樋口一葉が22歳の時に発表した作品です。
大つごもりとは大晦日のことであり、大晦日の夜に起こった出来事が小説になっています。親戚を支援しなくてはならない「お峯」が奉公先からお金を盗んでしまうのですが、そのご奉公先のドラ息子が物語を大きく揺るがします。
樋口一葉は生涯を貧困との戦いに費やした女性ですので、その経験がこの『大つごもり』という小説に投影されているのは間違いないとろこでしょう。
たけくらべ/1895年/樋口一葉
『たけくらべ』は樋口一葉が23歳の時に発表した作品です。
『たけくらべ』は樋口一葉の作品のなかで最も有名かつ出来の良い作品と言って差支えないと思います。
樋口一葉と言えばこの『たけくらべ』を想起される方も多いのではないでしょうか?
なお、舞台となった「大音寺前」に樋口一葉は9か月程度居住しており、自らの体験がこの小説に反映されています。
物語の中心をなす信如と美登利の別れは子供が大人になる寂しさと切なさを、読者の胸に深く突きさします。
軒もる月(のきもるつき)/1895年/樋口一葉
『軒もる月』は樋口一葉が23歳の時に発表した作品です。
小説内で動く時間はほんの数時間。その間に主人公の「袖」が妻である自分、母親である自分、女性である自分、3つの自分と葛藤をする様を描いています。
その結末は決してスッキリするものではなく、むしろ「袖」の狂気を感じる、いままでの樋口一葉の恋愛中心の小説からは少し離れた趣向の作品となっています。
ゆく雲(ゆくくも)/1895年/樋口一葉
この小説は樋口一葉が23歳の時に発表した作品です。
この小説のヒロイン上杉縫は、継母にあたられていおり、心を閉ざしながら生きています。
その縫に恋をしたのが、すでに許嫁が決まっている野沢桂次。決して本人が納得している許嫁ではなく、縫に恋をしてしまい、「この世の終わりまで君のところに手紙を断たない」と言葉を残します。心が少し雪解けした縫ですが、男の心と時の流れはゆく雲のようで・・
うつせみ/1895/樋口一葉
この小説は樋口一葉が23歳の時に発表した作品です。
『うつせみ』とはセミの抜け殻のことであり、狂気にかられ、徐々に衰弱していくヒロインの姿を『うつせみ』と称して描かれています。
にごりえ/1895年/樋口一葉
『にごりえ』は樋口一葉を代表する作品の1つです。
『にごりえ』とは「水の濁った入江や川」の意味であり、小人口「お力」の人生を「にごりえ」と称して作品の中で描いています。店の看板娘となっているお力ですが、職業や自分の生まれから来る不安定な境遇にお力は決して幸せではありません。
その「お力」の生涯は読んだ者に大きな余韻を与えることでしょう。
十三夜/1895年/樋口一葉
樋口一葉23歳の時の作品。
樋口一葉の作品の中でも、有名な作品と言えるでしょう。
夫のDVに耐えかねたヒロインお関が、離婚を報告するために実家に戻りますが、血縁の為に夫婦関係を続けることを決意。その帰り道にかつての想い人であった、「高坂録之助」と出会う。
というストーリーです。
血縁の中での女性の地位の低さを嘆く樋口一葉の叫びが聞こえてくる作品です。
この子(このこ)/1896年/樋口一葉
樋口一葉が24歳の時に発表した作品。
『国民の友』という婦人誌に掲載されたため、当時文章読解力が低かった明治時代の女性にもわかるような平易な言葉で書かれています。
また内容も文学的な難しい内容ではなく、「生まれてくる子供はかわいいものだ」という単純なお話です。
わかれ道(わかれ道)/1896年/樋口一葉
『わかれ道』は樋口一葉が24歳の時の作品です。
孤児であり出生も分からない「吉三」と、その「吉三」を弟のようにかわいがる「お京」。吉三はお京に肉親としての役割を強く求めるのですが、お京は「出世」により妾となり、吉三の元を離れることになります。
それを聞いた吉三は、お京に妾をやめるように言うのですが・・
裏紫(うらむらさき)/1896年/樋口一葉
樋口一葉が24歳の時に「上」を発表した作品がこの『裏紫』ですが、樋口一葉の死去により、未完成となってしまいました。
主人公である人妻が、不貞行為を働き、自分の倫理観と感情の狭間で揺れる。という構成になっています。
われから/1896/樋口一葉
『われから』は樋口一葉が24歳の時に発表した、樋口一葉最後の作品です。
『われから』では親子二代に渡る悲劇の物語が展開されます。
不倫で家を捨てた母、その母を憎み巨万の富を得た父、そして死んだ父の遺産を受け継ぎ社会的身分の高い夫を手に入れることができた、主人公「お町」。この一家をメインとして物語が進むのですが、特に家庭内で女性であることの悲劇について焦点があてられています。
樋口一葉文学をより深く味わうには
以上で樋口一葉の全小説の紹介を終えます。
樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、樋口一葉の小説もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。