この記事では、樋口一葉の小説『雪の日』のあらすじと感想、そして解説を書いています。この小説は、恋人関係にあったとされる半井桃水との関係がベースになっていると言われています。『雪の日』に起こった出来事は、果たして主人公「珠」の人生ににどのような意味をもたらしたのでしょうか?
樋口一葉『雪の日』の人物相関図
この小説は主人公である臼井珠が、過去を振り返る形で物語が進みます。
主人公以外には、珠の先生である桂木と、珠の育ての親である叔母が主要人物として登場します。
樋口一葉『雪の日』の概要
樋口一葉は、明治25年2月4日の雪の日に師匠であり恋仲であったと言われる半井桃水宅を訪れています。その時に半井桃水に「ここに一宿したまへ」と誘われます。
これを断った樋口一葉ですが、日記には「種々の感情胸にせまりて『雪の日』といふ小説一篇あまばやの腹稿なる」と記しています。
半井桃水に泊まるように言われた『雪の日』、胸にこみあげる感情を元に、この「雪の日」の執筆が開始されました。
しかし、樋口一葉はその後明治25年6月には桃水と別離しており、この『雪の日』の完成が26年1月であることからも、『雪の日』は当時の構想とは大きく違う物語へと変貌したと思われます。
樋口一葉『雪の日』のあらすじ
主人公は珠という人妻の女性。
珠が子供の頃のことを回想するという構成で物語は進みます。
珠は臼井家という名家の子であり、その一人娘である。両親を早くに失っていますが、夫を亡くして家に戻ってきてくれた叔母には実子のように育てられていました。
幼児の頃から小学校の先生である桂木一郎(33歳)に教育を受け、珠は桂木を慕っていたが、15歳になる頃にはその間柄が村の噂となってしまいます。
叔母は「薄井家と桂木家では釣り合いが取れない、もう桂木の門は叩くな」と責めます。
珠は自分汚れたものという目で見る叔母を恨めしく思い、身の潔白を主張しますが、この時自分のこころの底にある感情には気づいていませんでした。
1月7日の雪の降る日叔母の留守中に雪を眺めているさなか、「ああ、師(桂木)は何をしているのだろうか」という思いが起こり、そのまま臼井家を出て行きます。
故郷や叔母を捨て、現在珠は東京で桂木の妻となっているが、東京では女らも美しく珠など立ち並べるレベルではなかった。夫もつれなくなったしまった。今年もまた我が家に雪が積もるだろう。珠が出て行った年に死んだと言われる叔母のことを思い、全ては誤りであったと後悔せざるをえないのである。
樋口一葉『雪の日』の感想と解説
先生に恋をした少女が故郷を捨てて、駆け落ちします。
しかし時は流れ夫婦仲は冷めてしまい、あの雪の日にあった激しい激情を後悔する、という話です。
かなり現実的な話ですねw
駆け落ちは現実的ではないかもしれませんが、長年連れ添った夫婦は「なんで結婚したんだろう」なんてことを思いがちになるものです。
思春期は自分の現在の感情が全て、とは言わないまでも恋愛経験が無かった場合は初めて体験する感情ですので、その想いが永遠に続くものであると考えます。
樋口一葉も、執筆が開始された時期は半井桃水と恋愛関係にあったため、その情熱を小説に注いでいたのかもしれません。
物語の最後で、主人公である珠は駆け落ちしたことを悔いますが、樋口一葉もこの『雪の日』を書き終えた段階では半井桃水と別離を経験しています。
もし『雪の日』の執筆が完了した段階で、半井桃水との関係が続いていたなら、この物語の結末もまた違ったものになっていたことでしょう。
樋口一葉『雪の日』をより深く味わうには
以上で『雪の日』の感想は終わりです。
樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、『雪の日』もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。