この記事では、樋口一葉の小説『たま襷』のあらすじと感想、そして解説を書いています。この小説では、二人の男性から言い寄られた女性が苦悩の末にある決断に至るまでが描かれています。
樋口一葉『たま襷』の概要
「たま襷」とは「たすき」の上品な言い方です。
2人の男性から好かれ(襷をかけられた)女性の悲劇を描いています。
樋口一葉『たま襷』の人物相関図
この小説では綺麗な三角関係が描かれます。
主人公糸子と、その糸子を狙う華族(お金持ち)の縁と、糸子の世話役の雪三です。
樋口一葉『たま襷』のあらすじ
青柳糸子は名家に家柄であるが、早くに父母を亡くし、19歳にして身寄りがありません。
ただ一人、家老の息子だった松野雪三は糸子を守り育てています。ある日の夕暮れ、湯上りの糸子がうちわを垣根越しに落としたのがきっかけで美少年に声をかけられます。
しかし糸子はこの心の揺れを恥じ、糸子の良縁だけを願って糸子に尽くしてくれる雪三に彼を頼みとすることを伝えます。
しかし、その言葉をきっかけに雪三は糸子への恋心が芽生えます。
糸子が出会った美少年の名前は竹村子爵の次男で縁と言い、彼もまた糸子に一目ぼれし母に打ち明け、正式に結婚の申し入れをします。
しかしその申し入れを受けた雪三はこともあろうか、「糸子には決まった人がいてそれは自分だ」と竹村の使者に伝えます。
それを聞いていた糸子は、雪三の心の迷いは自分の貞操がないせいで生じたことであり、また縁には「主従とは名ばかりだったのか」と蔑まれることを恥じ、命を絶つ決心をするのでした。
樋口一葉『たま襷』の感想
二人の男性から言い寄られた女性がその狭間に立たされ、苦悩して自害を決意するというお話です。
雪三の恋心を目覚めさせたのは自分の失言が原因だと考え、縁に対しては「主従関係というのは嘘だったのか」と指摘されるのが怖かったから、というのが理由です。
現代では理解しにくいですが、「主従の関係でありながら恋愛関係に陥るのはタブー」「男に誤解を与えるような振る舞いはダメ」など当時の価値観を垣間見ることができる作品です。
樋口一葉『たま襷』をより深く味わうには
以上で『たま襷』の紹介は終わりです。
樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、『たま襷』もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。