この記事では、樋口一葉の小説『五月雨』のあらすじと感想、そして解説を書いています。二人の女性に愛された男性。しかしその二人にそれぞれ情を抱いた杉原三郎は、どのような決断をくだしたのでしょうか?
樋口一葉『五月雨』人物相関図
五月雨は典型的な三角関係をテーマとしています。
杉原三郎と、三郎を好きになる梨本優子と八重の3人が出てきます。
梨本優子と八重は主従関係なのですが、実はある秘密があります。
樋口一葉『五月雨』の概要
物語の終盤、杉原三郎が梨本優子と八重と三角関係となり、心を痛ませることとなります。
クライマックスで降る五月雨による暗さ、杉原三郎の迷いによる暗さ、そして二人の女性の心境を重ね合わせた象徴として『五月雨』とう題名がつけられています。
樋口一葉『五月雨』のあらすじ
富豪の娘であり、端麗な顔立ちの梨本優子(19)。侍女(貴人に仕えて身の回りの世話をする人)に1歳年下の八重がいる。優子と八重はとても仲が良く、優子からは本当の姉妹として扱われている。
優子は杉原三郎という男性に惚れており、それを打ち明けられた八重はその恋を実らせることを優子と約束する。
しかし、杉原三郎は八重の幼馴染で、八重の両親が亡くなってから八重は杉原三郎を探すために東京へ出てきたのでした。しかも優子と八重は実は乳姉妹であり、それを知った八重は優子に仕えるようになったのでした。
八重は恩のある優子のために、自分の思いは封印し、優子の手紙を三郎へ届ける。
杉原三郎は遂に優子と八重と出会いますが、八重の様子からすべてを悟り、以降彼女たちの前に姿を見せることはなかった。
五月雨で湿りがちなある日、気晴らしに出かけた先で一人の修行僧を見かけて見送りをする。
しかしその修行僧は実は出家した杉原三郎だったのだ。
樋口一葉『五月雨』の感想と解説
三角関係に悩んだ杉原三郎が思い悩んだ挙句、出家するというお話です。
杉原三郎の幼馴染である八重は、三郎のことが好きなのですが、八重に恩義を感じておりその気持ちを封印しています。
優子は連絡のない三郎のことを思い悶々とします。
それぞれ三者とも題名にある『五月雨』模様に心がなってしまうわけですね。
そしてまさにその五月雨の中二人は一人の僧を見かけるわけですが、それが杉原三郎だった、という落ちですね。
結局三角関係の中の誰一人として幸せにならない結末になっており、切なさが残ります。
なおこの『五月雨』に代表される樋口一葉の初期小説は、現代で言えば「恋愛小説」的なものが多く、あまり評価はされていません。
樋口一葉『五月雨』をより深く味わうには
以上で『五月雨』の紹介は終わりです。
樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、『五月雨』もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。