この記事では明治時代の女流小説家樋口一葉の作品のうち、読むのをオススメする上位4作品を紹介していきます。
樋口一葉は短命(24歳で結核のため他界)でしたが、後世に残る優れた作品を多数発表しています。その中でも特段優れていると言われているのが『たけくらべ』『にごりえ』『おおつごもり』『十三夜』です。
それぞれの作品を背景とあらすじと共に紹介していきます。
樋口一葉の読むべき有名な作品を4つ紹介
たけくらべ
樋口一葉の小説のうちで最も有名なのはこの「たけくらべ」で異論はでないところでしょう。
樋口一葉は父親の作った借金を返済し生計を立てるために小説家となりますが、原稿料が想定していたほど貰えませんでした。
そこで吉原遊郭(風俗街)で、金物屋兼駄菓子屋を経営し始めます。
風俗街近辺ということもあり、そこで樋口一葉は今まで出会ったことのない種類の職業の方と触れ合うこととなります。車引き(低所得の代表でした)やお寺の僧、そして遊郭で働く女(風俗嬢)。そうした職業を親に持つ子らの多くはまた、親の職業を引き継ぎ生きていくことになるのです。
そのような子供たちに駄菓子屋で触れ合うことができた一葉は、そこでの体験を元に『たけくらべ』を執筆します。
『たけくらべ』の主人公二人は、お寺と遊女を姉に持つという家庭環境であるが故に、それぞれ僧と遊女になる将来が運命付けられています。二人はお互いのことを意識しあう仲ですが、僧と遊女ではこの先混じりあう道は無いのです。その二人の心のやりとりと、避けようのない別れを切なくも美しく描く名作となっています。
にごりえ
次に紹介したいのは『にごりえ』です。
今で言うところの風俗嬢である主人公の女性は、愛嬌も良く店の看板娘となっています。
しかしその笑顔とは裏腹に、風俗嬢という職業や自分の生い立ちに引け目を感じています。またかつての客であった男の子供からは、「おに、おに」と(家庭を崩壊させたから)呼ばれておりそれを耐えられないほどの苦痛であると感じています。
かつてお店に通っていたその男性客はお金が尽き店には通えないながらも、女性に対する想いは捨てきれないでいます。
その男女ふたりが最後の章で悲劇的な結末に至るまでの過程を、樋口一葉はお互いの心情とともに悲しく描いています。
また、タイトルの『にごりえ』もまた秀逸です。『にごりえ』とは濁った川のことを指し、本作の主人公の人生と重ね合わせると、なんともぴったりな題名であると感じられることでしょう。
おおつごもり
樋口一葉の作品は恋愛を絡めるものが多いのですが、この『おおつごもり』に恋愛要素は皆無です。
大晦日に貧困に苦しむ親戚を助けるため、主人公の女中は奉公先からやむにやまれずお金を盗んでしまいます。
しかし奉公先のドラ息子が結果的に主人公を救ってしまう、という物語です。主人公が救われたところに胸をなでおろすと同時に、物語の過程で貧困に苦しむ女性の心境も伝わってきます。
樋口一葉の人生は貧困との戦いでもあり、この小説を執筆していた最中も資金のやりくりに困る毎日でした。
そんな樋口一葉本人や貧困に苦しむ人々の苦境、救われたいという気持ちがこの小説を産んだと言えるでしょう。
十三夜
『十三夜』
十三夜では夫から精神的なDVを受けた主人公が実家に戻り、離婚を報告しようとする場面から物語は始まります。
実家では、主人公が結婚したことによりすべてが上手く回っているよう両親から聞かされます。離婚をすることによりその幸せが崩壊することや、実家に残してきた子供のことを考えると、口が重くなり言葉が出てきません。
ついに離婚のことを口に出した主人公に対して、主人公に共感して激怒する母親と、「お前の涙は我々にもわかたれる、家の為に頑張ってくれないか」と激励する父親。それぞれの想いが交差します。
物語後半では、実家に戻ることを決意した主人公が人力車の中でかつての想い人と再会を果たします。果たして主人公と相手の胸中はどのように揺れ、そしてどのような決断に至るのでしょうか・・?
というのが物語のあらすじです。
樋口一葉の生きた明治時代は「妾」制度(夫が家の外に愛人や子供を作っても許される)に代表されるように、女性にとって非常に辛い時代でした。ひとたび家庭に入ってしまえば、女性は男性を支えるもの。そのような「家」という制度に押しつぶされそうになる女性の悩みを、樋口一葉は小説を通じて訴えています。
樋口一葉をより深く味わうには
以上で樋口一葉の有名小説ランキングは終わりです。
樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、これらの小説もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。