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星の王子さま

サン=テグジュペリ『星の王子』のあらすじと感想|本に含まれた教訓を徹底解説

投稿日:2019年8月15日 更新日:

星の王子さま

『星の王子様』という本をご存知の方は多いのではないでしょうか?

この本はその平仮名が多い文体から、児童向けの本と思われがちですが大人にとって必要な教訓がめいっぱい詰まっています。

そのあらすじと感想、解説を行い、この記事を読み終わった時に「この言葉はそういう意味だったのか」と理解できるよう、わかりやすく解説を行っています。

『星の王子さま』の背景

『星の王子さま』は、フランス人作家サン=テグジュペリが1946年に出版した「Le Petit Prince」を日本語訳し、1953年に出版されたものです。「Le Petit Prince」は80ヶ国以上の国で翻訳され、現在まで六千万部以上販売されている、聖書に次ぐベストセラーとなっています。

作者のサン=テグジュペリがこの『星の王子さま』を執筆したのは、第二次世界大戦の真っただ中のことでした。亡命先のアメリカで、普段から不思議な少年の絵を紙きれなどに書いていたのを見ていた出版社のオーナーから、その少年を主人公として童話を書くように促されたのがきっかけでした。

『星の王子さま』の主人公「ぼく」の職業は飛行士ですが、作者であるサン=テグジュペリも1926年からパイロットとして活躍します

しかしサン=テグジュペリは1944年に地中海上空で行方不明となり、1998年になりようやく地中海マルセイユ沖にあるリュウ島近くの海域で、彼の遺品が発見されることとなります。

『星の王子さま』のもう一人の主人公「王子さま」はわがままで、純粋な子供のような性格をしているのですが、サン=テグジュペリ本人もまたわがままで、欲しいものは必ず手に入れたがる子供のような性格であり、「王子さま」に自己が投影されていると考えられます。

つまり『星の王子さま』はサン=テグジュペリの自伝的要素が多く詰め込まれた小説と言えるでしょう。

『星の王子さま』から学べる教訓4つ

『星の王子さま』は子供向けの本であると思われがちですが、大人にとって多くの教訓が散りばめられている作品です。

この本を読んだ後にあながた学べるのは次のような教訓です。

  • 仲よくなれば、それはあなたにとってたいせつな、とくべつなものとなる
  • 仲よくなるには、時間をむだにすることが大切
  • かんじんなことは目にみえない、こころで見る必要がある
  • 美しいところは目に見えない

この記事を読めばその意味がわかるように解説していますので、最後までお付き合いよろしくおねがいします。

『星の王子さま』あらすじ

『星のおうじさま』の物語は時系列が少しややこしいです。時系列を簡単に説明すると次のようになります。

  1. 飛行士になった経緯を語る著者
  2. 砂漠で飛行機が落ち、星の王子さまに出会う著者
  3. どうやって地球に来たかを星の王子さまが語る
  4. 「2」の砂漠のシーンへ戻る
  5. 星へ帰っていく王子さま

本を読んでいると混乱する時があるので、本記事では皆様が混乱しないようわかりやすく書いていきたいと思います。

それでは最初の、著者が飛行士になった経緯を語る著者の場面から、あらすじを紹介していきます!

第一章:ウワバミの絵を大人に見せて「ぼく」は飛行士になる

一匹のけものを、飲み込もうとしているウワバミ(大きな蛇)の絵を「ぼく」は6歳の時に見ます。ウワバミは飲み込んだ獲物をぺろりと飲み込み、半年の間に飲み込んだ獲物が「こなれてくる」のです。

そこでぼくは、象を飲み込んだウワバミの絵を書いておとなの人たちに見せるのですが、「これはぼうしだ」と言われてしまいます。

次にウワバミの中身を書いて見せても、「そんな絵はやめて地理と歴史と算数と文法に精を出すよう」言われてしまうのです。

ウワバミの絵2

そういったわけで、ぼくは絵かきになることを止めて飛行機の操縦士になります

それからものわかりのよさそうな人にでくわすと、ウワバミの絵を見せるのですが、大人はみな帽子としてしか見てくれません。

そうして「ぼく」は、ゴルフや政治やネクタイの話をすると、おとなは「物わかりの良い人間だ」と満足するのでした。

解説

象を飲み込んだウワバミを誰が初見でわかるのか?誰もわかりませんね(よく見ると先端部分に目が描かれているのですが)。

しかし6歳の「ぼく」はこれはウワバミだと強く主張するわけです。
この話を聞いてどう思われるでしょうか?

あなたは「あぁ、子供ごころを忘れた大人になったなぁ」などと反省することでしょう。

第一章でサン=テグジュペリはあなたに、子供の頃の純粋な気持ちをここで再起させてほしいと願っているわけですね。

2章からは主人公の「ぼく」と星の王子さまの物語が始まります。

第二章:ぼくと星の王子さまの出会い

そんなわけで6年前、「ぼく」は飛行機がサハラ砂漠でパンクする前は、親身になって話をする相手がいませんでした。

その飛行機の故障はぼくにとって生きるか死ぬかの問題でした。一週間の飲み水しかないため、それまでに飛行機を直すか、飲み水を確保するかしないといけないのです。

しかし「ぼく」は夜があけると小さな声で目を覚まします。

「ね・・羊の絵をかいて!」

これが私と星の王子さまとの出会いでした。

砂漠のど真ん中で、ぼっちゃんが一人いることをびっくり仰天する主人公ですが、ふしぎなことも、あんまりふしぎすぎると、いやとはいえないものです。

「ぼく」は羊の絵を3枚描きますが、ぼっちゃん(星の王子さま)はどれにも満足しません。

3匹のヤギ

モーターの修理でいそいでいた「ぼく」は、ぶっきらぼうに次の絵をかいたのです。

ヤギの入った箱

こいつぁ箱だよ。あんたのほしいヒツジ、その中にいるよ

するとぼっちゃんの顔はぱっと明るくなり、こう言ったのです。

うん、こんなのが、ぼく、ほしくてたまらなかったんだ。このヒツジ、たくさん草を食べる?

こうして、ぼくは、王子さまと知り合いになったのでした。

第三章:星の王子さまの秘密

ぼくからの質問には一切答えない王子さまですが、会話から推測すると徐々に王子さまのことがわかってきます。

王子さまはどこか他の星からきたようですが、それはとても小さな星らしく、羊を放しておいてもすぐに見つけられるくらいの大きさのようです。

王子さまが住む小さい星

 

王子さまと出会って3日目、「ぼく」は王子さまからバオバブの木の話を聞くことができました。

王子様の星にはバオバブの木が生えるのですが、王子様の星は小さいため、小さいうちに抜いておかないと星が破裂するのです。

 

バオバブの木

どうやら王子さまはバオバブの木を食べてもらうために、ヒツジを飼っていたようです。

王子さまと出会って5日目、ぼくは王子さまの秘密を知ることになります。王子さまはだしぬけに、こうぼくに聞きます。

「羊は小さい木をたべるんだったら、花もたべるんだろうね」
「トゲのある花も?」

どうやら僕が書いた羊の絵が、自分の星の花を食べてしまわないか心配しているようです。

そして花の事より飛行機の修理で忙しく、質問に適当に答えてしまうぼくに王子さまは激怒するのでした。

だれかが、何百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪のはながすきだったら、その人は、そのたくさんの星を眺めるだけで、幸せになれるんだ。

そして、僕の好きな花が、どこかにある と思っているんだ。

それで、羊が花をくうのは、その人の星という星が、とつぜん消えてなくなるようなものなんだけど、それもきみは、たいしたことじゃないっていうんだ

王子さまはそれきり何もいわず、そして、わっと泣き出してしまうのでした。

解説

王子さまの住む星は、とても小さく、バオバブの木が成長すると星が破裂するほど小さいようです。そして羊を飼えば羊がバオバブの木を食べてくれるんじゃないかと期待します。

でも王子さまはヒツジが花も食べてしまうんじゃないかと心配し、ぼくにあれこれ質問しますが、いそがしいぼくは王子さまを邪険に扱ってしまい、王子さまが激怒してしまいます。

王子さまとはなになにがあったのか、そして「たった一輪のはながすきだったら、その人は、そのたくさんの星を眺めるだけで、幸せになれる」とはどういう意味なのか?

それらの謎がこれから解き明かされていきます。

第四章以降では、王子さまが自分の星を出て行き、地球にきて僕とであうまでの物語が語られます

王子さまは、星を出てからとぼくと出会うまでの間に、たくさんのことを学び、「はな」に対する想いが変化していくことがわかります。

第四章:自分の星で花に出会う王子さま

その花は、他の星から王子の星へ種として飛んできた花でした。その花が咲くと王子さまは「ああ、美しい花だ」と思わずにはいられません。

しかしその花は、自分の美しさを鼻にかけて王子様を苦しめはじめます。

風がふいてくるのが怖いから「ついたて」を、あたくしのいた国とは違い寒いから「覆いガラス」を、と注文が多いのです。

草木は風に吹かれるものですし、この星に来る前は種だったので、他の国の気候がわかるはずないのに。

王子さまは本気で花を愛してはいたのですが、すぐに花の心をうたがうようになってしまいます。

そしてそれが原因でこの星を出て行くことにするのでした。

解説

王子さまは上記のような理由で星を出て他の星を巡り、現在地球に来ていたことがわかります

あるひ王子さまは僕に心を打ち明けて言いました

「あの花のいう事なんか、きいてはいけなかったんだよ。人間は、花のいうことなんていいかげんにきいてればいいんだから。

花はながめるものだよ。においをかぐものだよ。ぼくの花は、ぼくの星をいいにおいにしてたけど、ぼくは、すこしもたのしくなかった」

それからまた、こうもうちあけていいました

「ぼくは、あの時、なんにもわからなかったんだよ。あの花のいうことなんか、とりあげずに、することで品定めしなけりゃあ、いけなかったんだ。

ぼくは、あの花のおかげで、いいにおいにつつまれていた。明るい光の中にいた。だから、ぼくは、どんなことになっても、花から逃げたりしちゃいけなかったんだ。

ずるそうなふるまいはしているけど、根は、やさしいんだということをくみとらなけりゃいけなかったんだ。

花のすることったら、ほんとにとんちんかんなんだから。だけど、ぼくは、あんまり小さかったから、あの花を愛するってことが、わからなかったんだ」

解説

簡単に言えば、かまってちゃんをしてくる女性に対して鈍感な王子さまが気づかずに関係が悪化してしまったんですね。

女性である花側からしてみれば、これだけ美しい私が王子さまを愛しているのに思い通りに動いてくれない。

男性である王子さま側からしてみれば、おなじく愛していて、花の言葉を信じていろいろ気にかけているのに、何かおかしいぞ?

とお互い不信感を募らせてしまったわけです。

第五章:花と別れて旅に出る王子さま

こうして花に不信感を募らせた王子さまは、花に別れを告げ自分の星を出て行きます。

王子さまの膝の高さほどの活火山や休火山のすすはらいをすませた王子さまは(王子さまの星はとても小さいのです)わかれのしるしに、花に水をかけて、覆いガラスをかけてやろうとすると、王子さまはいまにも涙がこぼれそうになるのでした。

「さよなら」そう花にわかれの言葉を投げる王子さま。

「わたし、ばかだった」「許して、幸せになってね」と花はちっとも咎めるようなことをいわないので、王子さまはおどろきました

花がどうしてこう大人しくしているのか、わけがわかりませんでした。

「そうなの、私、あなたを愛しているの。あなたがそれを何も気づいていなかったのは、私のせい。でもそんなこと、どうでもいいこと。私もだけど、あなたもやっぱりおばかさんだった。幸せにね。」

花は泣いている顔を王子さまに見せたくなかったので、次のように言いました。

「ぐずぐずしないで。じれったい!もうよそへいくことに決めたたんだから、いっておしまいなさい!さっさと!」

解説

当時はツンデレなどという言葉はなかったはずですが、時代が変わっても男女のやりとりは同じなのですね。

花の気持ちがわからない王子さまは、不思議な気持ちのまま星を出発してしまうのでした。

第六章:星巡りの放浪に出る王子さま

こうして星を出発した王子さまは星の見物をはじめます。なにか仕事をさせてもらって、勉強しようというわけです。

解説

それぞれの星で出会うのは子供目線からすると奇妙な大人たちばかりで、反面教師の対象として寓話的に描かれています。

つまり我々の地球上で実際に存在する大人・仕事像を暗喩していると思われる人たちが登場し、その人たちを子供目線で批判しています。

一番目の星:王様の星

一番目の星の王様は、命令しかしない王様です。

王子さまは、王様の前であくびをしてしましますが、エチケット違反という理由で王様はあくびを禁止します。

寝不足であくびを我慢できないと王子さまが答えると、なんと王様は

「そうか、では、あくびしなさい」と命令するのです。

こうして「無理な命令はしないという」道理の元、王様は命令をし続けるのでした。

二番目の星:うぬぼれ男の星

二番目の星はうぬぼれ男の星です。

王子さまを見ると「やあ!やあ!おれに関心している人間がやってきたな」と叫びます。

王子さまに拍手を強要し、それに応じると、うぬぼれ男は帽子を持ち上げながらていねいにお辞儀しました。

でも、人に感心されることが、なんで、そうおもしろいの?

おとなって、ほんとにへんだな、と王子さまはむじゃきに思うのでした。

三番目の星:飲み助の星

三番目の星には呑み助が住んでいました。

呑み助は、空のビンと酒のいっぱいはいったビンを、ずらりと前にならべてだまりこくっています。

「なぜ酒なんかのむの?」と王子さまはたずねます。

「忘れたいからさ」という呑み助

「忘れるって、何をさ?」気の毒になり聞く王子さま

「はずかしいのを忘れるんだよ」と呑み助は伏し目がちに答えます。

「はずかしいって、なにが?」あいての気持ちをひきたてるつもりで聞きます。

「酒をのむのが、はずかしいんだよ」と呑み助はだまりこくります。

王子さまは当惑してそこを立ち去りました

解説

根本的に何か原因があってお酒を飲んでいたはずの呑み助ですが、おそらくそれが何かを忘れてしまっています。

そしてお酒を飲んでいる姿自身が恥ずかしいと思い込み、その酒を飲んでいる姿を忘れるために、お酒を飲むというどうしようもない状態です。

四番目の星:実業屋の星

四番目の星は実業屋の星でした。その男はたいへん忙しかったので、王子さまがやってきても頭をあげようともしません。

その男は金持ちになるために星の数を数えて、自分のものにしているのでした。

男の理屈では、誰のものでもない星は、一番に「持とう」と考えるだけでその星を自分のものにすることができるらしいのです。

王子は花と火山を3つ持っていることをその男に話し、花に水をやり山のすすはらいをすることで、火山や花のためになると伝えます。

男の行動は星のためにはなっていないと言い、そこを立ち去りました。

五番目の星:点燈夫の星

五番目の星は、星のうちで一番小さな星でした。そこにはちょうど街燈と点燈夫がいられるくらいの場所しかありません。

そこで点燈夫は、1分おきに街燈の火をつけたり消したりしているのです。

星が1年ましに早く廻るようになったため、星が1分に1周するようになり、今では1秒も休めなくなっているが命令にしたがって火をつけたり消したりしているということ。

その男をみて、王子さまは次のように思うのでした。

王子さまは遠くへ旅をつづけながら、あの男は王さまからも、うぬぼれ男からも、呑み助からも、実業家からも、けいべつされそうだ。

でも、ぼくにこっけいに見えないひとといったら、あのひときりだ。

それも、あのひとが、じぶんのことでなく、ほかのことを考えているからだろう。

解説

王子さまは誰のために仕事をしているかで、こっけいかそうでないのかが決まるようです。

現代人からみると何の利益も業績もない点燈夫の仕事こそこっけいに見えてしまうのは、我々が子供の純粋な心を失ったせいなのでしょうか。

最後の星:地理学者の星

六番目の星は十倍も大きな星でした。

地理学者をしているという男がいますが、自分で外に出ることはないとのこと。

探検家が来たら報告を受け、その探検家がしっかりした人間かどうかをしらべさせるのだと言う。そして、素性がよさそうだと思えば、その人の発見したことの証拠を持ってきてもらうのだ。

自分の星に花があることを伝えた王子さまは、花が「はかない」ことを地理学者から聞きます。

「はかない」の意味を「そのうち消えてなくなる」ことだと知った王子さまは、はじめてあの花がなつかしくなるのでした。

第七章:地球へ到着し、蛇に出会う王子さま

地理学者から次に行く星として地球を勧められた王子さまですが、地球に足を踏み入れると、だれもいないのでびっくりします。

星を間違えたのではないかと心配していると、月の色をした環が、砂の中に動いています。

「こんばんわ」と、王子さまはべつにあてもなしにいいました。

「こんばんわ」と、蛇がいいました。ここは地球のアフリカだという蛇。

その時、王子の星はちょうど真上に光っており、それを見て美しい星だという蛇。

王子さまの足首にまきついた蛇は次のように言うのでした。

「おれがさわったやつぁ、そいつが出てきた地面にもどしてやるんだ。だけど、あんたは、むじゃきな人で、おまけに、星からやってきたんだから・・・」
「あんたみたいに弱い人が、こんな、岩でカチカチの地球にやってくるなんて、かわいそうだな。あんたが、いつか、あんたの星が、なつかしくてたまらなくなって帰りたくなったら、おれが、あんたをなんとか助けてやるよ」

解説

自分の星を出て、さまざまな星を巡り地球に到着した王子さま。

王子さまが最初に遭遇したのはヘビでした。王子さまが「ぼく」と出会うのは、地球に到着して約1年後です。

この蛇とはこの後再会してあることを行うのですが、ここでの会話が伏線となっています。

第八章:地球でバラの花を見つける王子さま

蛇と会った王子さまが砂原と岩と雪をふみわけて、長いことあるいていると、やっと一本の道をみつけました。

バラの花の咲き揃った庭を見つけた王子さまですが、花がみな、遠くに残してきた花に似ていることに気が付きます。

遠くに残してきた花は、自分のような花は、世界のどこにもないといったものでした。それだのに、どうでしょう。見ると、たった一つの庭に、そっくりそのままの花が、五千もあるのです。

「ぼくは、この世に、たった一つという、めずらしい花を持っているつもりだった。

ところが、じつは、あたりまえのバラの花を、一つ持ってるきりだった。

あれと、ひざの高さしかない3つの火山。火山も一つはどうかすると、いつまでも火をふかないかもしれない。ぼくはこれじゃ、えらい王様なんかになれようがない。

王子さまは、草の上につっぷして泣きました。

解説

これまで世界に一つだけの花(笑)だと思っていた花がバラであり、どこにでもあるということを知り、王子さまは悲しくなります。

しかし次のキツネとの会話でその悲しみは晴れるのでした。

第九章:地球できつねから「たいせつなもの」を学ぶ王子さま

王子さまがつっぷして泣いていると、そこに狐があらわれました。悲しみの中にいる王子さまはきつねに遊ばないかと誘います。

ところが狐はこう言います。

おれ、あんたと遊べないよ。飼いならされちゃいないんだから

飼いならすってなんのことだい?と聞く王子さまに対してキツネはこう答えます。

よく忘れられてることだがね。<仲よくなる>ってことさ

仲よくなる?説明を求める王子さま。

おれの目から見ると、あんたは、まだ、いまじゃ、ほかの十万もの男の子と、べつに変わりない男の子なのさ。

だから、おれは、あんたがいなくなったっていいんだ。あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。

あんたの目から見ると、おれは、十万ものキツネとおんなじなんだ。だけど、あんたが、おれを飼いならすと、おれたちは、もう、おたがいに、はなれちゃいられなくなるよ。

あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ

そうしてキツネは王子さまに、もう一度バラの花を見に行くよう促します。そして戻ってきたらひとつ、秘密の贈り物をすると言います。

もう一度バラの花をみた王子さまはこう言います。

あんたたち、ぼくのバラの花とは、まるっきりちがうよ。それじゃ、たださいているだけじゃないか。

だぁれも、あんたたちとは仲よくしなかったし、あんたたちのほうでも、だれとも仲よくしなかったんだからね

あんたたちは美しいけど、ただ咲いているだけなんだね。あんたたちのためには、死ぬ気になんかなれないよ。

(中略)だけど、あの一輪の花が、ぼくには、あんたたちみんなよりも、たいせつなんだ。

だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。覆いガラスもかけてやったんだからね。ついたてで、風にあたらないようにしてやったんだからね。毛虫を殺してやった花なんだからね。

不平もきいてやったし、じまん話もきいてやったし、だまっているならいるで、時には、どうしたのだろうと、きき耳をたててやった花なんだからね。

ぼくのものになった花なんだからね

王子さまがキツネのところに戻ってくると、キツネは王子さまに秘密を教えます。

なに、なんでもないことだよ。心でみなくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ

かんじんなことは、目に見えないんだよ

そして

あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、時間を無駄にしたからだよ
めんどうみた相手には、いつまでも責任があるんだ。きみは、きみのバラの花に責任があるんだ

解説

この王子とキツネの話は『星の王子さま』の中で最もと言って良いほど重要な会話が散りばめられています。

自分の星の花が、どこにでもあるバラの花であることを知った王子さまは悲しくなります。

しかしキツネとの会話の中で、同じバラであっても飼いならされた関係、つまりは信頼関係を築いた場合は同じバラであっても、その人にとっては特別なバラになるということを知るのです。

そして再びバラを見に行った星の王子さまは、自分のバラの花はたくさんの時間を費やして、関係性を築き上げたバラであり、目の前のバラたちとは全然違うことを確認します。目の前のバラたちはたいそう困惑したでしょうが笑

キツネは「心でみなくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」というこの作品最大の名言を王子さまに残します。

バラの花は美しいことは表面上わかりますが、信頼関係や友情など重要なことは見た目ではわかりません。

そしてバラの花をとてもたいせつに思っているのは、そのバラの花のために時間を無駄にしたから、つまりそうした信頼関係や友情は時間をかけてみないと理解できないということをキツネは教えます。

そして最後に、関係性を築き上げた人に対しては責任があると、キツネは言います。

こうしてバラの花に対して責任があることを知った王子さまは、ここで星へ帰ることを決意するのです。

第十章:地球の寓話を語る王子さま

ここではきつねとわかれたあと、星の王子さまが地球に降りてきてから経験した(王子さまにとっては)奇妙な体験が語られます。

王子さまと列車の転轍機

転轍手(てんてつしゅ)は列車の行先を変更する仕事をする人です。

転轍手は、やってきた列車を右へ運んだり、左へ運んだりしているわけです。

そこで、王子さまは聞きます。

みんな、たいへんいそいでるね。何を探し求めてるの、あの人たち?
それ、機関車に乗ってる男もしらないんだよ

王子さまは急いでどこ目的もなく行く人間を奇妙に思います。

そのなかで、子供たちだけが窓ガラスに鼻をぴしゃんこにおしつけています。

こどもたちだけが、なにがほしいか、わかってるんだね。きれでできた人形なんかで、時間を無駄にして、その人形をとても大切にしているんだ

解説

王子さまはバラに対して時間をむだにしていて、その分バラがたいせつな存在になっています。一方で子供も、きれで出来た人形で時間を無駄にしており、たいせつな存在になっています。

王子さまがきつねから学んだことがあてはまっているわけですね。

王子とあきんど

王子さまは地球で「あきんど」に会います。

「あきんど」はのどの渇きがケロリとなおるというすばらしい丸薬を売っていましたが、王子さまは尋ねます。

「なぜ、それ、売っているの?」
時間が、えらく倹約になるからだよ。そのみちの人が計算してみたんだがね、1週間に53分、倹約になるというんだ

ぼくがもし、53分ていう時間、すきに使えるんだったら、どこか泉の方へ、ゆっくり歩いてゆくんだがなぁ

解説

これで、王子さまが星を出てから砂漠で墜落した「ぼく」と出会うまでの話はおしまいです。

再び、砂漠で遭難中のぼくと王子さまの話に戻ります。

第十一章:美しいところは目に見えない

王子さまが地球で体験した話を聞いている間に、ぼくの飛行機は砂漠のなかで故障してから8日目を迎え、とうとう飲み水が尽きてしまいます。

井戸を探すために、途方もない砂漠を歩く二人。くたびれて腰をおろした王子さまはぼくにこういいました

星があんなに美しいのも、目に見えない花が一つあるからなんだよ・・・
砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ・・・

その言葉を聞いて、ぼくは子供だったのことを思いだします。

ぼくが住んでいたある古い家には、なにか宝が埋められているといういいつたえがあり、そのおかげで家が美しい魔法にかかっているように思われたのです。

そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは目に見えないのさ

ぼくは王子さまにいいました。

うれしいな、きみが、ぼくのキツネとおんなじことを言うんだから

そう王子さまはいいました。

そして夜が明けるころ二人は井戸を発見します。

解説

キツネが言った「かんじんなことは目に見えない」とうメッセージは、砂漠の中に隠された井戸を探すという行為を通じて「何でもその美しいところは目に見えない」という意味へ昇華していきます。

第十二章:ぼくがくれた、とくべつな水

幸運にも井戸を発見し、みずを汲み上げたぼく。

「その水がほしいな。のましてくれない?」王子さまはぼくにそう言います。

王子さまの口にその水を運ぶと、王子さまは目をつぶったままごくごくと飲みました。

それはお祝いの日のごちそうでもたべるようにうまかったのです。

その水は、たべものとは、べつなものでした。星空の下を歩いたあとで、車がきしるのをききながら、ぼくの腕に力を入れて、くみ上げた水だったのです。

王子さまは、庭でバラの花を五千も作っている人を引き合いに出し、彼らはじぶんたちが何が欲しいのかわからずにいると考えます。

さがしているものは、たったひとつのバラの花のなかにだって、少しの水にだってあるんだがなあ・・・
だけど、目では、何も見えないよ心でさがさないとね

そして、明日は王子さまがこの地球に降りて来て1年が経過する日であることをぼくに告げます。

そして王子さまの様子から、二人には別れが近づいていることをぼくは予感します。

ぼくは、仲のよいあいてができると、ひとは、なにかしら泣きたくなるものかもしれないと考えるのでした。

解説

井戸を見つけた僕は、その水を王子さまに飲ませます。

しかしその水は王子さまにとってただの水ではなく、飼いならされた、つまりはともだちになった僕が足を棒にして見つけた水です。王子さまにとっては特別な意味を持つ水だったわけです。

これは、王子さまにとって関係性を築き上げたバラが「たいせつなもの」であるのと同じ理屈で、ぼくがあげたみずもまた「たいせつなもの」であったわけです。

このように目で見ただけでは、ども水も同じ水ですが、心でさがすと、その水も「たいせつなもの」であることが王子さまにはわかったのです。

第十三章:さよなら王子さま

あくる日の夕方、王子様が蛇と会話をしている様子が聞こえてきます。その蛇はちょうど1年前に王子様が地球に降りてきた時に出会った蛇でした。

「きみ、いい毒、持ってるね。きっと、ぼく、長いこと苦しまなくていいんだね?」

ぼくが石垣のところへついたとき、ちょうどうまくおりてくる王子様を僕は両腕でうけとめますが、その顔は雪のように白くなっていました

うまくいかないと思っていた飛行機の修理がうまくいったことを伝えようとしていた僕ですが、そのことをすでに王子さまは知っていたのでした。

「ぼくも、きょう、うちに帰るよ・・・」

解説

キツネとの会話で、「めんどうみた相手には、いつまでも責任がある」ことを知った王子さまは、星に帰ることを決意していました。

いよいよ、おわかれの時です。

夜になったら、星をながめておくれよという王子さま。そして君におくりものをあげるよと言って、王子さまは笑います。

その笑い声が好きだというぼく。しかし王子様はその笑いが贈り物だと言います。

人間はみんな、ちがった目で星をみてるんだ。旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。

ちっぽけな光くらいにしか思っていない人もいる。学者の人たちのうちには、星をむずかしい問題にしている人もいる。

ぼくのあった実業屋なんかは、金貨だと思ってた。だけど、あいての星は、みんな、なんにもいわずにだまっている。

でも、きみにとっては、星が、ほかの人とは違ったものになるんだ・・

それはどういうことかと聞くぼく

ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。

その一つの星のなかで笑うんだ。だから、君が夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。

すると、きみだけが、笑い上戸の星をみるわけさ

王子さまはそれを、笑い上戸のちっちゃい鈴をたくさん、きみにあげたようなものだろうねと言います。

解説

星は見る人によって価値は変わります。僕にとってはの星とは王子さまが住んでいる星となり、王子さまはその星で笑っています。

でも僕は王子さまの星がどれかは教えてもらっていませんので、見る星全てが笑っているように見えるというわけです。

王子さまに飼いならされた=信頼関係を築き上げた僕にとって、星は他の人と見るのとは違う、大切なものになるのです。

王子さまはその夜、僕に知らせることなく1年前に地球へ降りた場所へ出かけていきます。

ぼくは首尾よくおいつくと王子は言いました。

「こないほうがよかったのに、それじゃつらい思いをするよ。ぼく、もう死んだようになるんだけどね、それ、ほんとじゃないんだ」

だまっている僕に王子さまは言います。

「ね、とてもいいことなんだよ。ぼくも星をながめるんだ。星がみんな、井戸になって、さびついた車がついてるんだ。そして、ぼくにいくらでもみずをのましてくれるんだ」
「ほんとにおもしろいだろうなあ!きみは、五億も鈴を持つだろうし、ぼくは、五億も、泉を持つことになるからねえ・・・」

解説

ぼくにとって、星は笑い上戸の星ですが、王子さまにとって、星は泉の星になるわけです。

なぜなら、王子さまも主人公と関係性を築き上げた=なかよくなったので、王子さまが星をみるとき、その星はぼくが水をあげたたいせつな星になるからです。

そして、王子さまの足首のそばに、黄色い光がキラッとひかりました。

そして1本の木が倒れでもするように、しずかに倒れました。

最終章

6年後のぼくが、この話を振り返ります。

ぼくは王子さまが自分の星に帰ったことはよく知っていると言います。

なぜなら、夜があけたときに、どこにも、あのからだが見つからなかったからです

ぼくは夜になると、そらに光っている星たちに、耳をすますのがすきです。まるで五億の鈴が、鳴りわったているようです。

サン=テグジュペリ『星の王子さま』感想

いかがでしたでしょうか?

星を出るときは「たいせつなもの」の存在に気づいていなかった王子さまでしたが、ぼくと出会うまでの間のまざまな体験を通じて、はなに対する想いが変化していきます。

たとえ同じバラであっても、そのバラと仲良くなり関係性を築き上げればそのバラはあなたにとって他のバラとは違うたいせつなものになるのだよ、ということを王子さまは学びます。

そしてそのためにはその相手と時間を無駄にする、つまりとりとめもないようなことでも時間を共有することが必要です。

そうしてできあがった関係は、目には見えないものです。

そう、いつだってかんじんなことは目に見えない、こころで見る必要があるのです。

こうして王子さまは、はなとの特別な関係に気づいたのですが、地球での滞在中に「ぼく」ともその関係が築き上げられていたのです。

たいせつなぼくが井戸からくみ上げた水を飲み、そのたいせつさを認識します。

かんじんなことは、目に見えない、言い換えれば「美しいところは目に見えない」ということは、人間との関係だけでなく、人とモノでもあてはまります。砂漠は井戸がかくれているから美しい。星が美しいのも、美しい花がどこかにあるから。

このような真理に気づいたので、お互い別れた後であっても二人が見上げる星空は他の人がみる星空とは違い、美しいものとして認識されるのです。

我々大人はそうしたことに気づかず お金や権力などの目に見えるものにしか興味がありません。そう、王子さまがほかの星で出会った王様、うぬぼれ男、呑み助、実業屋などのように。

王子さまの言葉を借りれば、われわれ読者が本当にさがしているものは、バラのはなのなかにだって、すこしのみずにだってあるのです。

人にとって本当に大切なものは、相手と時間をかけて、なかよくなり、特別な関係性を築くこと。サン=テグジュペリがこの本を通して言いたかったのはそこではないでしょうか?

わたしたちは大人になりましたが、もとは子供だったのです。ほんとうに大切なものを見つけることは、いまからでもできるはずです。

最後に、地球のきつねが王子さまに教えてくれた言葉を再度掲載しておきます。

心でみなくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ

サン=テグジュペリ『星の王子さま』を無料で読むには

『星の王子さま』は子供向けの作品であるかのように思えますがが、実は日々の生活に擦り切れてしまった大人にこそ読んでいただきたいと考えています。

人生で大切なものが何であるかという教訓がふんだんに散りばめられた良書であり、大人だからこそ気づけることも多いはずです(もちろん子供と一緒に読んでも良いでしょう)。

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