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バリー・マーシャル|ピロリ菌を発見したノーベル賞受賞者

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バリーマーシャル

この記事ではオーストラリアの医師であり、ピロリ菌の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞したバリー・ジェームズ・マーシャルの生い立ちやその発見について記事を書いています。

バリー・ジェームズ・マーシャルの生い立ち

バリーマーシャルは1951年9月30日、西オーストラリアのカルグーリーで生まれます。

母親は看護師で父親は特定の職業を持ってはいなかったようで、主に母親の収入で生計を立てていました。

4人兄弟の長男であったバリー・マーシャルは、幼いころから優秀で1974年には西オーストラリア大学医学部で医学・理学士の学位および医師免許を取得しています。

また在学中の1972年には妻エイドリアンと結婚、現在は4人の子供に恵まれています。

バリー・ジェームズ・マーシャルのキャリア

1979年、バリー・マーシャルはロイヤルパース病院で胃炎の研究を行っていた病理学者であるロビンウォーレンと出会います。

二人はともに胃炎に関連する菌の研究に腐心します。

ヘリコバクターピロリ菌の初期培養に成功するが

1982年、二人はヘリコバクター・ピロリ菌の初期培養を行い消化性潰瘍と胃癌がヘリコバクターピロリ菌に関連した疾病であるとの仮説を立てます。

しかし胃の中はご存じの通り強い酸で満たされています。

強酸の環境下で生きることができる細菌の存在があるなんてことは、当時考えられるような説ではなかったんですね。悲しいながら。

二人の仮説は一笑に付されてしまいます。

しかしマーシャルはのちにこの件に対して「誰もが私に反対しているが、私は自分が正しいことを知っていた」と発言しています。

この時点でヘリコバクターピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの疾病に関与していると確信していたわけですね。

ピロリ菌の培養に成功し論文を提出するが・・

1982年に1年間の研究資金を獲得したマーシャルとウォーレンは、研究を続けます。

しかし100個のサンプルのうち最初の30個は彼らの仮説を証明することはできませんでした(ピロリ菌を培養できませんでした)。

しかし二人はラボの技術者が培養2日後に培養物を捨てていたことを発見します。

これは喉綿棒に付着した口の中の組織が、培養2日後には培養物を役に立たないようにしてしまうためで、「培養二日後に培養物を捨てる」ことは標準的な習慣だったのです。

しかし31回目のテストで偶然が起こります

ラボの技術者は31回目のテストで「他の病院での仕事がある」という理由のため、2日目に培養物を破棄する時間が無かったのです。

そしてその破棄されなかったサンプルの中ではピロリ菌が培養されていたのです。

つまりピロリ菌は2日よりも遅い速度で成長し、胃の培養物は他の生物によって汚染されていないことがわかりました。

1983年に彼らはこの研究結果をオーストラリアの消化器協会に提出しましたが、審査員は1983年に受け取った論文の下位10%と評価を下し、彼らの論文を事実上却下します

ピロリ菌の培養が成功してもなお、彼らの研究は日の目を見ることは無かったわけですね・・。

そしてバリーマーシャルがとった驚きの行動とは?

自らを実験台にしてピロリ菌の存在を証明するバリー・マーシャル

このような迫害(?)を受けながらもピロリ菌の存在を確信し続けるバリー・マーシャルはとうとう自らの胃にピロリ菌を移植する行動に出ます。

感染症の病原体を特定する際の指針の一つに「コッホの原則」というものがあります。

「コッホの原則」の原義は

  1. ある一定の病気には一定の微生物が見出されること
  2. その微生物を分離できること
  3. 分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせること
  4. そしてその病巣部から同じ微生物が分離されること

この原則を満たせばピロリ菌が感染の原因菌であると立証できるわけです。

1984年、マーシャルは内視鏡検査を行った後、胃潰瘍の患者から取り出したヘリコバクターピロリ菌を培養した抽出液を飲みました。

当時マーシャルは数年後に胃潰瘍を発症すると予測していましたが、なんとわずか3日後にマーシャルは吐き気と口臭(無塩酸症のため胃の中の細菌を殺せず、老廃物が口臭となった)を発症します。

8日目にマーシャルは繰り返し内視鏡検査を受け、大規模な胃炎が起こっていることを確認します。

そしてマーシャルの生検からはピロリ菌が培養され、マーシャルの胃にピロリ菌が定着したことが明らかとなりました。

これをまとめると

胃炎や胃潰瘍の患者にピロリ菌がいることがわかった

ピロリ菌を分離して培養できた

分離したピロリ菌をバリー・マーシャルに感染させ同じ病気が起こった

病巣部(胃)からピロリ菌を分離できた

ことになり、上記のコッホの原則を満たすことができたわけですね。

この実験は1985年にオーストラリアのMedical Journalで発表され、この研究によりヘリコバクターピロリ菌の存在がようやく認知され2005年にマーシャルはノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。

ピロリ菌は人体にどのような影響を与えるのか

今ではピロリ菌の存在は周知され、病院でピロリ菌が発見された場合は保険適応でピロリ菌の除菌を行うことができます。

ピロリ菌に感染すると感染後数週間から数カ月で100%慢性胃炎となります。

そして慢性胃炎は胃潰瘍・十二指腸潰瘍や機能性胃腸炎などの原因となるのです。

【論文あり】明治プロビオヨーグルトLG21の効果効能は?より引用

マーシャルの研究は我々の生活に大きな恩恵を与え、それはノーベル生理学・医学賞の受賞にふさわしいものであったと言えるでしょう。

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