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樋口一葉『うつせみ』のあらすじと感想|狂気の理由は?

投稿日:2019年6月29日 更新日:

うつせみ

この記事では、樋口一葉の小説『うつせみ』のあらすじと感想、そして解説を書いています。狂乱状態になった女性の現在そして過去が、周りの語りから少しずつ明らかになるという樋口一葉としては少し変わった構成の小説となっています。

樋口一葉『うつせみ』の概要

「軒もる月」で一種の狂乱状態に陥った女性を描いた樋口一葉は、この『うつせみ』でも再び狂気に病む女性を描いています。

樋口一葉の北隣に引っ越してきた女性が狂女だったために、この女性が『うつせみ』のヒロイン、雪子のモデルになったと見られています。

なおうつせみとはセミの抜け殻のことであり、正気を失ったヒロインの「雪子」が衰弱していく様をセミの抜け殻と重ね合わせたものと思われます。

樋口一葉『うつせみ』人物相関図

『うつせみ』は主人公である雪子が話のほとんどの部分を占めており、その恋人であったと思われる植村と許嫁の正雄は回想のみでの登場となります。

雪子が狂っていく様と、なぜ雪子が狂ってしまったのかを物語の中心にそえた物語となっています。

うつせみ人物相関図

樋口一葉『うつせみ』のあらすじ

深く茂った木々の中に家がある。

その家は多少不便な場所にあるということ以外は、他に何一つ文句のつけようのない貸家です。

そこに一人の男がこの家を借りたいと言い、その日のうちに契約が完了し、夕暮れに人が引っ越してきます。

引っ越しをしてきた人の中に、血の気がまるで感じられない女がおり、名前を雪子と言います。

どうやら雪子が「どこか別のところに行こう」と昨日言い出したことで急遽引っ越しが決まったらしい。

雪子は機嫌のよい時にはまるで人形のようにおとなしいが、スイッチが入ると物陰に隠れて泣き出してしまう。そして、「許して、許してください」「私もあとから行きます」と、またある時は「植村さん、植村さん、どこへ行ってしまうの」と叫ぶのであった。

雪子は気が狂っているため借家を転々とし、また世間体もあるため入院もできないでいる。

女中や家族の話から推測をすると、雪子には正雄という許嫁がいる。しかしそれを知らずに植村録郎という男が雪子に恋をし、自殺をしてしまったらしい。

「若旦那(正雄)さえいらっしゃらなかったら、お嬢様だってこんなふうになってしまわれるほど思いつめることなはなっだろうに・・。でもそれを言えば植村さまがいなければそれこそ平和に過ごせていけたはずなのに。生きているとどうにもならないことが多いね」そう女中の一人は言うのであった。

8月の半ばごろから、雪子は狂乱することが多くなり、一睡も眠らなくなった。目は落ちくぼみ、頬はこけ、その形相は生きている人間とは思えない。

両親はただ雪子がこの世から消えてしまうことのないようにと祈り続けるのであった。

樋口一葉『うつせみ』の解説と感想

全体的にぼんやりとした、曖昧な小説となっています。

なぜならば主人公の雪子が狂人であるので内面描写があまりなく、女中や両親・許嫁の言葉の端から「雪子の身の回りに何が起こって、今の現状になっているのか」を推測していかないといけないからですね。

読み進めていくと、雪子と両想いであったと思われる植村さんとやらが亡くなってしまったことを契機として雪子が狂人となってしまったことがわかります。

しかし雪子と植村さんとの絡みが直接描写されることはなく、雪子の植村さんへの思いが断片的に語られるだけで詳しくはどのような経緯があったのかはわからない・・。

このような理由のためにこの『うつせみ』には酷評がつくことが多く「失敗作」とまで言われています。

『うつせみ』をより深く味わうには

以上で『うつせみ』の感想は終わりです。

樋口一葉の人生や時代背景について知ることができれば、『うつせみ』もより深く理解できるようになると思います。別途記事にしていますのでご参照よろしくおねがいします。

樋口一葉|明治を生きた天才・貧乏女流作家の人生|意外な男性遍歴とは?

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