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サン=テグジュペリ『星の王子さま』の絵(イラスト)を徹底解説

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挿絵

『星の王子さま』はその教訓に富んだ物語が大人のための童話として人気で、今や世界各国で莫大な販売部数を誇る名作です。

しかし物語も秀逸なのですが、物語に付随して出てくる「絵」も、実は示唆に富んだものとなっています。今回はその『星の王子さま』の挿絵について解説をしたいと思います。

『星の王子さま』の絵(イラスト)には戦争が絡んでいる

第二次世界大戦は、1939年から1945年までの6年間、日本・ドイツ・イタリアの日独伊三国同盟と、イギリス・ソビエト連邦・オランダ・フランス・アメリカ・中華民国などの連合国との間で起きた戦争です。

サン=テグジュペリが『星の王子さま』を書いたのは、第二次世界大戦中であり、サン=テグジュペリはアメリカへ亡命中にこの作品を書き上げました。

サン=テグジュペリが『星の王子さま』を執筆中、母国フランスは劣勢であり、そのことからこの本には戦争へのメッセージが織り込まれていると考えた方が整合性がつく場面がいくつもあります。

『星の王子さま』ウワバミの絵(イラスト)の解説

ウワバミの絵2

これは象がウワバミ(おおきな蛇)に飲み込まれた絵ですね。よく見ると右端にウワバミの目がかかれているのがわかります。

上が飲み込まれた図、下がその内面を描写した図です。

ウワバミは飲み込んだ獲物を半年間かけて「こなれて」いくので、象は半年間をかけこの蛇の餌となるわけです。

主人公のぼくはこの絵を見せて「これこわくない?」と大人に聞くのですが、大人たちはこの絵をみても帽子としか答えてくれない。

次に僕は象が中に入っている絵を見せるのですが、大人は「そんなことより 勉強しなさい」というので、主人公は画家をあきらめて(絵心がないのだと思って)飛行士になるのである。

物語の展開上、子供の想像力に大人がついていけない、つまり子供の頃は関心を持てていた事項が大人になりその能力や気持ちが失われたことを、暗に批判しているように見える。

しかし、これに戦争と絡めるとウワバミは違う絵になるのです。

ウワバミの絵は弱肉強食思想の象徴で、ウワバミはドイツを含む日独伊(強)の軍事行動、象は侵略された側の中国・チェコ・ポーランド(弱)という説があるのです。

これはなぜかというと、第二次世界大戦およびそれに付随する軍事行動が半年おきに発生しており、その期間はまさにウワバミが象をこなすのに必要な期間だからです。

1937年7月7日 盧溝橋事件(日中戦争の発端)
1938年3月11日~13日 ドイツがオーストリアを併合
1938年9月29日 ミュンヘン協定に調印(チェコスロバキアのスーデン地方をドイツが略奪)
1939年3月14日~15日 ドイツ、ミュンヘン協定をやぶりチェコの残りの領土を占領
1939年9月1日 ドイツがポーランドに侵攻
1940年4月9日 ドイツがデンマークとノルウェーに侵攻

そしてウワバミは中の獲物を半年かけて徐々にこなしていくという、よく考えれば恐ろしい動物です。

それを戦争に例えるなら、占領された国が徐々に侵略国により、悲劇的な状況なっていくことを意味します。

ウワバミの内側を見せてもそれを理解しようとしない大人たち。それは戦争によって侵略された国の姿を無視することであり、サン=テグジュペリはそうした大人たちを非難の対象にしたものと考えられます。

『星の王子さま』バオバブの絵(イラスト)を解説

バオバブの木

バオバブは実際に存在する植物です。

作中では王子さまの星が小さいため、放置すると星を破壊するほど巨大なものとなり、小さいうちに摘み取ってしまう必要がある植物として紹介されています。

王子さまの話によると、なまけものが一人住んでた星を知っており、その人はまだ小さいからといって、バオバブの木を三本放置していた結果・・・

バオバブの木

このようになってしまったわけです。

バオバブの木が星を埋め尽くしてしまったのです。

このように作中では悪の植物として紹介されているバオバブの木ですが、これを戦争に絡めるとどのような解釈が成り立つのでしょうか?

イラストでは3本の巨大なバオバブの木が星を破壊しようとしています。

この3本の木はドイツ(ナチズム)、ファシズム(イタリア)、帝国主義(日本)の象徴だと言われています。

つまり第二次世界大戦でフランスの相手国であった、枢軸3国のことをあらわしており、この3つの国を放置することで星が破壊される、つまり世界が破壊されてしまうという事を伝えようとしていたのです。

『星の王子さま』バラの4本のトゲのイラスト(絵)を解説

バラの花

王子さまが星に残してきたバラの花、それには4本のトゲがあります。

王子さまはバラの花に対するお互いの不信感から、自分の星を出て行くことを決断、その後さまざまな星をめぐり、最後にぼく(飛行士)のいる地球へたどり着きます。

そのバラの花には4本のトゲがあるという描写がたびたびあらわれます。

たとえばある日のこと、花は、そのもっている四つのトゲの話をしながら、王子さまにむかって、こういいました
「あたくしだって、爪はもっているんだから」花は、そういって四つのトゲを、むじゃきに見せたあと、こうつけ加えました
ぼくの花は、はかない花なのか、身のまもりといったら、四つのトゲしか持っていない
身のまもりといったら、四つのちっぽけなトゲしか、もってない花なんだよ・・

こう「4つのトゲ」を強調するのですから、何か暗喩があるかもしれないと疑われても仕方のないところです。

トゲで身を守ろうとしているバラの花を戦争中のフランスになぞらえるとしたら何が浮かび上がるでしょうか?

1つの説があります。

フランスは1942年11月から1945年のドイツ降伏以降まで、ドイツの占領下にありました。

バラの花の4つのトゲは、このドイツの占領に反対するフランスのレジスタンス運動の4つの拒否の精神

  • 不名誉の拒否
  • 対独協力の拒否
  • ヴィーシー体制の供与する一時的な安逸の拒否
  • 祖国フランスを飲み去ろうとしている不幸の前に絶望することの拒否

ではないかという説があります。

『星の王子さま』火山の絵(イラスト)を解説

火山

王子さまがもともと暮らしていた星には山が3つあり、2つは活火山、1つは休火山です。

この火山の絵(イラスト)もある意味が隠されていると言われています。

それはフランスにおける3つの政党です。

フランスは当時、ドイツと戦争を行うかどうかで3つの政党に分かれて激しい論議を繰り返しておりました。

その3つの政党とはドゴール派、ヴィシー政権、中間派の3つです。

このうちドゴール派と中間派は過激な発言を繰り返し、イラストで言えば活火山にあたります。

ヴィシー政権は「労働・家族・祖国」の新スローガンを掲げ、権威主義的な「国民革命」の実現を唱え、イラストで言うと休火山に該当します。

サン=テグジュペリはヴィシー政権がフランスを救済してくれるのではないかと期待をよせており、『星の王子さま』本文中でも休火山の上に座る描写があります。

『星の王子さま』のイラスト(絵)の解説を終えて

ここまで

  • ウワバミ
  • バオバブ
  • バラの4本のトゲ
  • 火山

のイラスト(絵)を解説してきました。

サン=テグジュペリは既に他界していますので、これらの絵が本当に解説のような意図を含めて描かれたものであるかどうかは質疑の余地が残るところです。

個人的にはウワバミとバオバブは解説の通りで間違いないだろうと思いますが、皆さんもこの素敵な星の王子さまのイラストがどのような意味を持つのか、議論してみるのも楽しいと思います。

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